私たちの研究テーマは、地震時の人的被害評価です。
地震・津波災害を対象として、建物被害や人的被害の定量評価、被災後の復興過程の分析、防災とまちづくり施策の整合性評価に取り組んでいます。とくに、木造住宅の耐震化、建物倒壊に伴う人的被害発生メカニズムの解明、室内安全性の把握、寒冷地特有の災害リスク評価を通じて、災害による被害軽減に資する実証的研究を進めてきました。近年は、AIや画像解析を用いた建物被害判定にも研究を広げ、災害直後の迅速な被害把握や地域施策との接続を視野に入れた研究を展開しています。
地震時の人的被害評価
地震時の建物被害と人的被害を定量的に評価し、死者低減に向けた耐震化戦略や防災対策のあり方を検討しています。木造住宅を中心に、地域特性や社会条件を踏まえた被害軽減策の研究に取り組んできました。
- 時間軸上の死者低減率最大化を主目標とした木造住宅耐震化戦略の策定:東海・東南海連動型地震を対象とした東海4県への適用事例(2008)
- 死者低減を目的とした行政レベルの震災対策意思決定のための多種想定地震の戦略的選択法(2009)
- 耐震改修により死者低減を効率的に進めるための木造家屋耐震評点の効果的目標値再設定(2014)
- The importance of seismic death risk assessment of households in the Kumamoto earthquake of 2016(2017)
建物倒壊と人的被害発生メカニズム
建物倒壊に伴う外傷、閉じ込め、重症化、後続地震による二次被害など、人的被害が発生する過程の解明に取り組んでいます。被害発生のメカニズムを詳細に捉えることで、より実態に即した被害想定と対策評価を目指しています。
- 大規模地震に対する地域保健基盤整備実践研究 地震による家屋倒壊に伴う外傷重症度指標(ISS)別人的被害分布の推定法に関する研究(2014)
- A NEW CAUSALITY MODEL FOR EVALUATING THE PROBABILITY OF HUMAN DAMAGE FROM INJURY TO DEATH IN COLLAPSED BUILDINGS(2017)
- 多発外傷性重症度指標を用いた建物倒壊による閉じ込め者の震後余命曲線の構築(2018)
- 繰り返し荷重を受ける木造建物の損傷度重畳問題の取り組み:耐震評点劣化の確率評価を用いた後続地震による2次被害シミュレーション(2020)
室内安全とリアルタイム被害把握
地震時の室内危険や被害状況を、情報技術を用いて把握・低減する研究を行っています。音情報解析、行動認識、AR、コンピュータビジョンなどを活用し、地震時の安全確保や迅速な状況認識につなげることを目指しています。
- コンピュータビジョンによるリアルタイム音声誘導システムの開発(2010)
- A Smartphone-Based System for In-House Safety Using Augmented Reality Technology(2014)
- 人体動作と姿勢認識及び家具転倒軌跡判定による地震時室内3次元危険度評価システム(2015)
- 地震時室内状況把握のためのリアルタイム音情報解析(2020)
AIによる建物被害判定
近年は、AIや画像解析を用いた建物被害判定にも取り組んでいます。とくに、車載カメラ動画を活用した建物損傷度判定や被災率評価を通じて、災害直後の広域被害把握の高度化を進めています。
- 畳み込みニューラルネットワークを用いた建物被害分類判定(2018)
- AIを用いた建物の損傷度判定モデルと車載カメラの動画による被災率の評価(2024)
- AIと車載カメラの動画を用いた建物の損傷度判定と被災度マップによる被災率評価(2025)
復興過程・住環境・住宅再建
被災後の住宅再建、住環境の変化、地域ごとの復興過程の違いに着目し、災害後の暮らしの再建を支える条件を分析しています。被災地の長期的な変化を捉えることで、防災と復興の接続を重視した研究を進めています。
- 1993年北海道南西沖地震被災地奥尻町住民の復興過程アンケート調査(2014)
- Financial Imbalances in Regional Disaster Recovery Following Earthquakes: Case Study Concerning Housing-Cost Expenditures in Japan(2018)
- 令和元年台風第15号で被災した住家等の住環境調査(2022)
- HOUSING RECONSTRUCTION PROCESS AND DEMOGRAPHIC DYNAMICS AFTER THE 2018 HOKKAIDO EASTERN IBURI EARTHQUAKE(2024)
寒冷地防災
北海道をはじめとする寒冷地を対象に、地域特性を踏まえた災害リスク評価を行っています。積雪寒冷条件下での建物被害や低体温症リスクなど、寒冷地特有の課題を重視して研究しています。
- 北海道内想定地震の影響度評価に関する研究:地域労働力の変遷に着目した分析(2016)
- 地域性及び時代性を考慮した木造建築物の地域地震被害率関数構築法の提案:北海道を例とした耐震評点分布を利用する方法(2018)
- Development of an estimation method for accidental hypothermia risk due to cold exposure in disasters triggered by earthquakes and tsunamis(2023)
- 積雪寒冷地における建物被害に起因した低体温症要対処者推定(2025)
まちづくりと防災
防災対策とまちづくり施策の関係に着目し、都市政策と災害リスクの整合性を評価する研究にも取り組んでいます。近年は、地域の将来像や施策間の相反・相乗効果を踏まえた、防災とまちづくりの統合的な検討を進めています。
- 地震防災学的観点からの都市施設の時空間変遷視覚化の試み(2015)
- 人口密度に追随する街区内建築物量が街区へ与える影響評価(2023)
- 斜面近傍地域の住宅特性の調査と建物倒壊シミュレーションによる減災戦略の検討(2024)
- 災害対策とまちづくり施策相互の整合性確保に向けた課題構造-北海道市町村調査に基づく相反・相乗効果に着目して-(2025)